霖雨後

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フラニ語学習記:第3週

投稿:2025/01/18 7:24

フラニ語学習 3 週間目.Miɗo Waawi Pular! の Competence 4, 5 を進めた.使用教材はフラニ語学習記:第1週の通り.

Competence 4: Ko honɗun nii?

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第 4 章はいよいよフラニ語の基礎文法に踏み込んでいく.フラニ語の特徴ともいうべき豊富な名詞クラスについてと,冠詞動詞(原型・命令法)について扱う.

名詞クラス

フラニ語学習記:第2週でも 𞤮𞤲 クラス,𞤩𞤫𞤲 について触れたが,フラニ語(Pular)の名詞は 24 の名詞クラスに分類されるとある(方言によって多少の違いはありそう).名詞クラスについて簡単に説明すると,名詞を形態的,意味的あるいは歴史的な観点で文法的に分類するもので,名詞句や文を構成する際に一致とよばれる現象を引き起こす.フランス語やドイツ語,ロシア語などに見られる文法的性(grammatical gender)も名詞クラスの典型例である.ニジェール・コンゴ語族(特に,大西洋・コンゴ諸語と呼ばれる言語群)では豊富な名詞クラスを持っているという特徴があり,同語族に属するスワヒリ語(Kiswahili)にも 18 の名詞クラスがある.日本語には名詞クラスと呼べるものはないが,モノを数える際に用いる助数詞はこれと似た性質を持っていて,細長いものであれば「本」,平たいものであれば「枚」など数える対象の意味特徴によって異なる単語を用いるのは近い考え方だろう(一致を引き起こさないので,区別して類別詞と呼ばれるらしい).

𞤮𞤲 クラス

𞤮𞤲 クラスは人間を表す名詞の単数形が属するとフラニ語学習記:第2週では紹介したが,他にも外来語や名詞の一般形(generic form)がこのクラスに属している.名詞の一般形とは,数や実体を考慮しない概念などに用いられる形で,具体的な個体などを指していないときは単数形よりもこちらが好まれるらしい.一般形の場合,単語の発音や単数形のときの所属クラスに関わらず 𞤮𞤲 クラスに分類される.

𞤯𞤫𞤲 クラス,𞤯𞤭𞤲 クラス

複数のモノは主に 𞤯𞤫𞤲 クラス,𞤯𞤭𞤲 クラスのいずれかに属する.どちらが選択されるかは最後の母音によって決まる.

  • 本(複数):𞤣𞤫𞤬𞤼𞤫 (𞤯𞤫𞤲)
  • 犬(複数):𞤦𞤢𞤪𞤫𞥅𞤶𞤭 (𞤯𞤭𞤲)

𞤳𞤵𞤲 クラス,𞤳𞤮𞤴 クラス

小さいものは単数の場合は 𞤳𞤵𞤲 クラス,複数の場合は 𞤳𞤮𞤴 クラスに分類される.

  • 子ども:𞤨𞤢𞤴𞤳𞤵𞤲 (𞤳𞤵𞤲)
  • 子どもたち:𞤨𞤢𞤴𞤳𞤮𞤴 (𞤳𞤮𞤴)

そのほかのクラス

他にも多くの名詞クラスがあるが,それらに関しては明確な基準はないため単語ごとに覚える必要があるらしい.なんとなく,最後の母音とか発音が関係していそう.

定冠詞

既に上記の単語で括弧つきで示しているが,フラニ語には定冠詞がある.名詞の後に付いて名詞クラス一致を伴う.ちなみに不定冠詞はないので,不特定の対象などは冠詞をつけない.

動詞

名詞には名詞クラスの大きな体系があったが,動詞はそれと対比して単純である.他動詞 ‫—𞤵𞤺𞤮𞤤‬,再帰動詞 ‫—𞤢𞤺𞤮𞤤‬,受身動詞 ‫—𞤫𞤺𞤮𞤤‬ の 3 種類しかなく,100% 規則変化する.この章では,動詞の原形と命令法について扱っている.

 Imp.
原形II s.II pl.I pl.
‫—𞤵𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤵‬‫—𞤫𞥅‬‫—𞤫𞤲‬
‫—𞤢𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤮‬‫—𞤫𞥅‬‫—𞤮𞤯𞤫𞤲‬
‫—𞤫𞤺𞤮𞤤‬N/A

受身動詞は命令形にならない.

𞤔𞤮𞤲𞥆𞤵 𞤲𞥋𞤣𞤫𞥅 𞤣𞤫𞤬𞤼𞤫𞤪𞤫 𞤦𞤫𞤲 𞤥𞤢𞥄 𞤫𞤲. 「この本を君のお父さんに渡して.」

  • 𞤶𞤮𞤲𞥆𞤵:渡す 𞤶𞤮𞤲𞥆𞤵𞤺𞤮𞤤 の II s. Imp.
  • 𞤲𞥋𞤣𞤫𞥅 𞤣𞤫𞤬𞤼𞤫𞤪𞤫:この本(を)
  • 𞤦𞤫𞤲 𞤥𞤢𞥄:君のお父さん(に)
  • 𞤫𞤲:?

最後の 𞤫𞤲 の意味だけわからない…….

Competence 5: Ɓeydu seeɗa!

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第 5 章では,主に状態動詞,人称代名詞の主格のもう 1 つの形,焦点完了形,副詞を扱う.

状態動詞と長い主格人称代名詞

Pular では,状態を表す場合は形容詞の叙述用法などではなく状態動詞で表現する.動作動詞が基本の動詞においても状態動詞として表現できることがあるため,状態相ともいうべきか.下表では状態形と併せて否定形も載せている.

原型Stat.Neg.
‫—𞤵𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤭‬‫—𞤢𞥄‬
‫—𞤢𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤭𞥅‬‫—𞤢𞥄𞤳𞤭‬
‫—𞤫𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤢𞥄‬‫—𞤢𞥄𞤳𞤢‬

状態動詞は主語の人称によらないので変化表が単純でみやすい.ただし,受身動詞の状態形と他動詞の否定形が同じ活用語尾を持っているので混同しないように注意したい.否定形については,否定の単語を用いずに動詞の変化で表現する.

状態動詞で文を構成する場合,主語となる人称代名詞は長い形(long form)になる.

 s. Subj.pl. Subj.
 
I𞤥𞤭𞤥𞤭𞤯𞤮(-II) 𞤥𞤫𞤲𞤥𞤫𞤯𞤫𞤲
 (+II) 𞤫𞤲𞤸𞤭𞤯𞤫𞤲
II𞤢𞤸𞤭𞤯𞤢𞤮𞤲𞤸𞤭𞤯𞤮𞤲
III𞤮𞤸𞤭𞤥𞤮𞤩𞤫𞤸𞤭𞤩𞤫

𞤃𞤭𞤯𞤮 𞤱𞤢𞥄𞤱𞤭 𞤆𞤵𞤤𞤢𞤪 (Miɗo Waawi Pular) は「私は Pular を話せる」という意味になる(教科書タイトル回収).

主語が代名詞でない場合は,𞤲𞤮 を主語の後ろにつける.

焦点完了形

Pular では,特に質問に回答するときなどで強調したい項(焦点)がある場合,文の先頭に持ってくる.ここでは,状態や完了相(perfective)の場合の変化をみる.

 ‫—𞤵𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤢𞤺𞤮𞤤‬‫—𞤫𞤺𞤮𞤤‬
I s.𞤥𞤭 —𞤭𞤥𞤭 —𞤭𞥅𞤥𞤭 —𞤢𞥄
II s.‫—𞤵𞤯𞤢‬‫—𞤭𞤯𞤢‬‫—𞤢𞤯𞤢‬
III s.𞤮 —𞤭𞤮 —𞤭𞥅𞤮 —𞤢𞥄
I pl. -II𞤥𞤫𞤲 —𞤭𞤥𞤫𞤲 —𞤭𞥅𞤥𞤫𞤲 —𞤢𞥄
I pl. +II‫—𞤭𞤯𞤫𞤲‬‫—𞤵𞤯𞤫𞤲‬‫—𞤢𞤯𞤫𞤲‬
II pl.‫—𞤭𞤯𞤮𞤲‬‫—𞤵𞤯𞤮𞤲‬‫—𞤢𞤯𞤮𞤲‬
III pl.𞤩𞤫 —𞤭𞤩𞤫 —𞤭𞥅𞤩𞤫 —𞤢𞥄

状態動詞の文では主格代名詞は長い形をとるが,焦点完了形では短い形になる.また II が関わるときに,代名詞が外れて動詞の形が変化する.表にするとやや大きいが,場合分けで考えると単純な分岐なので見た目ほど難しくない.

強調の副詞

動詞の意味を強めるための副詞は,動詞によって異なる.ばらばらで法則性が見いだせないため,もはや熟語として覚えたほうがよさそう…….

結び

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第 3 週ではついにこの言語の目玉ともいえる名詞クラスについての基礎を扱ったほか,動詞の変化形,特に状態を表す表現について学んだ.表現の幅が一気に広がったので楽しい.