霖雨後

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フラニ語学習記:第1週

投稿:2024/12/24 10:03

更新:2025/01/06 9:45

思い立って,フラニ語(Fulfulde)を勉強してみることにした.7–8週間で速習する計画.

フラニ語とは

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フラニ語,またはフラ語とは,西アフリカに広く分布しているフラニ族(フラ族)が主に使用する言語である.ニジェール・コンゴ語族に属し,同語族の他の言語と同様に多くの名詞クラスを持つのが特徴.一方で,声調は用いられない.

表記はラテン文字,アラビア文字のほか,独自の表記法としてアドラム文字(ADLaM; 𞤀𞤣𞤤𞤢𞤥)というものがある.アドラム文字は,アラビア文字のように右から左に単語ごと繋げて書くが,子音と母音とがそれぞれ独立しているアルファベットになっている.見出しや教育目的では,文字同士を繋げずに 1 字ずつはなして書く表記も見られる.

参考資料

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フラニ語は話されている地域が広いため方言がいくつかあるようだが,オンライン上に資料が揃っている Pular (𞤆𞤵𞤤𞤢𞤪) を中心に学習を進める.Pular は主にギニア共和国のフータ・ジャロン山地周辺で話されているようである.参考資料は以下:

  • Miɗo Waawi Pular!
    • Pular の教科書.主教材として.
    • 短い章ごとに分かれていて,話し言葉と書き言葉とを満遍なく学べる.
  • Dictionnaire de Fulfulde (Fulfulde Dictionary)
    • 英仏⇄フラニ辞書.単語学習の補助教材として.
    • (追記)ニジェールのフラニ語準拠なため,下記の Pular 辞書の方が良さそう.
  • (追加)Dictionnaire Pular
    • 仏⇄Pular 辞書.
  • ADLAM ALPHABET LEARNING GUIDE
    • アドラム文字の学習用補助教材.
    • 他の教材はラテン文字表記だが,アドラム文字に書き換えて学習を進める.
  • Adlam/Fula orthography notes
    • アドラム文字の細かい仕様を確認できる副教材.
    • デジタル組版の書き方なども参考になる.
  • FSI Fula Basic Course
    • 副教材.
    • テキストが古めだが,音声資料が充実している.

Competence 1: No wa'i?

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第1週は Miɗo Waawi Pular! より Competence 1 全体および Competence 2 の前半まで進めた.Competence 2 については次週の記事でまとめることにする.

進め方としては,まず最初の会話を丸暗記して,フラニ語の雰囲気を掴むことを目指す.その後,語彙を確認して,練習問題を順に解いていく.内容については参考資料に譲り,ここでは思ったこと・気づいたことを書く.

丁寧語

𞤌𞤲 𞤶𞤢𞤪𞤢𞥄𞤥𞤢 (On jaraama) が丁寧な挨拶,𞤀 𞤶𞤢𞤪𞤢𞥄𞤥𞤢 (A jaraama) がくだけた挨拶.実は,𞤮𞤲 は二人称複数形の代名詞で,二人称単数形は本来は 𞤢 である.フラニ語というよりも Pular の特徴らしいが,印欧語のように複数代名詞を丁寧語として使うとのこと.三人称にも同じ現象がみられて,𞤮(三人称単数代名詞)の代わりに 𞥀𞤫(三人称複数代名詞)を使って丁寧な言い回しにできるとのこと(コラムより).フランス語等で印欧語の例を知っているので,このあたりはすんなり理解できた.

入破音

ラテン文字で ɓɗ といった見慣れない表記があるが,これは入破音と呼ばれる発音を表している.記号は IPA のものをそのまま持ってきているようだ.簡単に説明すると,息を吐き出すのとは逆に空気を外から内に取り入れるようにして,調音点を閉じて咽頭を下げ,肺からの呼気を使わずに発音する.

他の言語だと b や d の異音として扱われそうだが,フラニ語では 𞤸𞤢𞤦𞥆𞤢𞤺𞤮𞤤(habbagol; 待つ)と 𞤸𞤢𞤩𞥆𞤢𞤺𞤮𞤤(haɓɓagol; 縛る?)とのように最小対立があるため区別する必要がある.

普段しない発音なので練習が必須だ.口の前に掌を当てて気流を確認することで,ある程度までは発音は向上できるだろう.独学の場合,あとは音声資料で確認するしかない.文字を見てすらすら発音できることを目標としたい.

借用語

𞤐𞤮 𞤥𞤢𞤪𞤧𞤵𞤣𞤫؟ (No marsude?) という挨拶が出てくる.意味を確認すると,Ça marche? と書いてある.この教科書は全編が英語で書かれているので,フランス語になっているのは意図的だろう.𞤥𞤢𞤪𞤧𞤵𞤣𞤫 というのがフランス語の marche から来ているということだろうか.フラニ語の話されている地域はフランス植民地の時代があったため,言語にフランス語からの借用が見られるとのこと.他にも,イスラームの影響で法学・宗教系の単語にはアラビア語の借用も見られるらしい.教科書の前書きには,こうした借用語は日常会話でも多く使われているとしつつも,極力固有語を用いると書いてあった.個人的には,音韻や名詞クラスなど借用語の取り扱いにも注目していきたい.

結び

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初週は Competence 1 を進めて,文字の読み書きや発音の基本に慣れることに終始した.次週からは2章ずつ進めたい.