フラニ語を引き続き勉強している.2 週目では Miɗo Waawi Pular! Competence 2, 3 を進めた.使用教材についてはフラニ語学習記:第1週の通り.
Competence 2: Wonaa mi Faranseejo, ɗey!
#第 2 章では,簡単な質問文や自己紹介文,人称代名詞,人間に関係する語彙群を学ぶ.
人称代名詞
言語学習ではおなじみの人称代名詞の表を載せる.この章では,主格 Subj. と独立形(?) Ind. とが登場する.独立形というのがあまり文法的な呼び方ではないが,主に強調のために使われるようだ.
s. | pl. | |||
---|---|---|---|---|
Subj. | Ind. | Subj. | Ind. | |
I | 𞤥𞤭 | 𞤥𞤭𞤲 | (-II) 𞤥𞤫𞤲 | 𞤥𞤫𞤲𞤫𞤲 |
(+II) 𞤫𞤲 | 𞤫𞤲𞤫𞤲 | |||
II | 𞤢 | 𞤢𞤲 | 𞤮𞤲 | 𞤮𞤲𞤮𞤲 |
III | 𞤮 | 𞤳𞤢𞤲𞤳𞤮 | 𞤩𞤫 | 𞤳𞤢𞤲𞤩𞤫 |
I pl. が 2 種類あるが,(-II) の方は相手を含まない場合,(+II) の方は相手を含む場合で区別されるとのこと.
𞤮𞤲 クラス,𞤩𞤫𞤲 クラス
人間を表す名詞は,単数では 𞤮𞤲 クラス,複数形では 𞤩𞤫𞤲 クラスに分類される.クラス名は,この教科書では代名詞や定冠詞から命名しているらしい.例えば,以下のような単語がある:
意味 | s. | pl. |
---|---|---|
教師,先生 | 𞤶𞤢𞤲𞥆𞤮𞥅𞤾𞤮 | 𞤶𞤢𞤲𞥆𞤮𞥅𞤩𞤫 |
学習者,〈一般に〉生徒 | 𞤶𞤢𞤲𞥋𞤺𞤮𞥅𞤾𞤮 | 𞤶𞤢𞤲𞥋𞤺𞤮𞥅𞤩𞤫 |
〈学校に通う〉生徒 | 𞤤𞤫𞤳𞥆𞤮𞤤𞤶𞤮 | 𞤤𞤫𞤳𞥆𞤮𞤤𞤩𞤫 |
料理人 | 𞤣𞤫𞤬𞤮𞥅𞤾𞤮 | 𞤣𞤫𞤬𞤮𞥅𞤩𞤫 |
医者 | 𞤣𞤮𞤬𞤼𞤵𞤪𞤶𞤮 | 𞤣𞤮𞤬𞤼𞤵𞤪𞤩𞤫 |
歌手 | 𞤴𞤭𞤥𞤮𞥅𞤾𞤮 | 𞤴𞤭𞤥𞤮𞥅𞤩𞤫 |
フラニ人 | 𞤨𞤵𞤤𞥆𞤮 | 𞤬𞤵𞤤𞤩𞤫 |
日本人 | 𞤔𞤢𞤨𞤮𞤲𞥆𞤢𞥄𞤶𞤮 | 𞤔𞤢𞤨𞤮𞤲𞥆𞤢𞥄𞤩𞤫 |
男 | 𞤺𞤮𞤪𞤳𞤮 | 𞤾𞤮𞤪𞤩𞤫 |
女 | 𞤣𞤫𞤦𞥆𞤮 | 𞤪𞤫𞤾𞤩𞤫 |
単数形は末尾が —𞤮 で終わり,複数形は —𞤩𞤫 で終わっているということが表からもわかる.また,いくつかの単語では子音交替という現象が起きている.日本人という単語は教科書には載っていなかったのだが,フラニ語版 Wikipedia で Japonnaajo という単語が検索で引っかかったので載せている(機械翻訳っぽいところもあるのでやや信頼に欠ける).
特に,職業を表す語彙は動詞から派生しているものが多く見られる.たとえば,𞤶𞤢𞤲𞥆𞤮𞥅𞤾𞤮(教師) は明らかに 𞤶𞤢𞤲𞥆𞤵𞤺𞤮𞤤(教える)から派生している.他にも,𞤣𞤫𞤬𞤮𞥅𞤾𞤮(料理人)は 𞤣𞤫𞤬𞤵𞤺𞤮𞤤(料理する),𞤴𞤭𞤥𞤮𞥅𞤾𞤮(歌手)は 𞤴𞤭𞤥𞤵𞤺𞤮𞤤(歌う),𞤣𞤮𞤺𞤮𞥅𞤾𞤮(走者,競技者)は 𞤣𞤮𞤺𞤵𞤺𞤮𞤤(走る)から派生している.
Competence 3: Ɓeyngure nden no e jam?
#第 3 章では,所有の表現,数詞,家族構成に関する語彙群を学ぶ.
疑問詞
第 2 章および第 3 章で出てきた疑問詞をまとめる:
どう | 𞤸𞤮𞤲𞥆𞤮 |
どこ | 𞤸𞤮𞤲𞤼𞤮 |
誰 | 𞤸𞤮𞤲𞥋𞤦𞤮 |
いくつ〈人に対して〉 | 𞤲𞥋𞤶𞤫𞤤𞤮 |
いくつ〈もの・動物に対して〉 | 𞤶𞤫𞤤𞤵 |
「いくつ」も,やはり名詞クラスによって形を変化させるらしい.
数詞・数字
フラニ語の数詞は二・五進法を採用している.基数詞も名詞クラスによって屈折するのだが,ここではもの・動物に対する一般形でまとめる.
1 | 𞥑 | 𞤺𞤮𞤮 |
2 | 𞥒 | 𞤯𞤭𞤯𞤭 |
3 | 𞥓 | 𞤼𞤢𞤼𞤭 |
4 | 𞥔 | 𞤲𞤣𞤴𞤭 |
5 | 𞥕 | 𞤶𞤮𞤾𞤭 |
6 | 𞥖 | 𞤶𞤫𞥅𞤺𞤮𞤮 |
7 | 𞥗 | 𞤶𞤫𞥅𞤯𞤭𞤯𞤭 |
8 | 𞥘 | 𞤶𞤫𞥅𞤼𞤢𞤼𞤭 |
9 | 𞥙 | 𞤶𞤫𞥅𞤲𞤢𞤴𞤭 |
10 | 𞥑𞥐 | 𞤧𞤢𞤨𞥆𞤮 |
20 | 𞥒𞥐 | 𞤲𞤮𞥅𞤺𞤢𞤴𞤭 |
30 | 𞥓𞥐 | 𞤷𞤢𞤨𞥆𞤢𞤲𞤯𞤫 𞤼𞤢𞤼𞤭 |
40 | 𞥔𞥐 | 𞤷𞤢𞤨𞥆𞤢𞤲𞤯𞤫 𞤲𞤢𞤴𞤭 |
99 までの数詞は,これらの組み合わせで表す.例えば,11 であれば 𞤧𞤢𞤨𞥆𞤮-𞤫-𞤺𞤮𞤮 であり,25 であれば 𞤲𞤮𞥅𞤺𞤢𞤴𞤭-𞤫-𞤶𞤮𞤾𞤭 であり,99 であれば 𞤷𞤢𞤨𞥆𞤢𞤲𞤯𞤫 𞤶𞤫𞥅𞤲𞤢𞤴𞤭-𞤫-𞤶𞤫𞥅𞤲𞤢𞤴𞤭 である.数詞は後置修飾なので,例えば「10 歳」は 𞤣𞤵𞥅𞤩𞤭 𞤧𞤢𞤨𞥆𞤮 と表現し,「50 人のフラニ人」は(数詞の形を適切に変えて) 𞤬𞤵𞤤𞤩𞤫 𞤷𞤢𞤨𞥆𞤢𞤲𞤯𞤫 𞤶𞤮𞤾𞤮 と表現する.
アドラム文字では,数詞も右から左に書く.これは,アラビア文字やヘブライ文字などのよく知られた右横書き文字の表記とは異なるため注意が必要.
所有の表現
人称代名詞の属格を下表にまとめる:
s. Gen. | pl. Gen. | |
---|---|---|
I | 𞤢𞤲 | (-II) 𞤢𞤥𞤫𞤲 |
(+II) 𞤥𞤫𞤲 (𞤥𞤫𞤫𞤲) | ||
II | 𞤥𞤢𞥄 | 𞤥𞤮𞤲 (𞤥𞤮𞤮𞤲) |
III | 𞤥𞤢𞤳𞥆𞤮 | 𞤥𞤢𞤩𞥆𞤫 |
I s. Gen. と II s. Ind. が同じ 𞤢𞤲 だったり,I(+II) pl. Gen. と I(-II) pl. Subj. とが同じ 𞤥𞤫𞤲 だったりと若干紛らわしい.数詞と同様に後置修飾する.
固有名詞は属格でも形を変えない.教科書の例では,𞤦𞤢𞥄𞤦𞤢 𞤀𞥄𞤥𞤢𞤣𞤵 で「𞤀𞥄𞤥𞤢𞤣𞤵 の父」を表すとあった.
動詞「持つ」は 𞤥𞤢𞤪𞤵𞤺𞤮𞤤 である(この単語は第 5 章で再び紹介される).「私には弟妹が 3 人いる」は,“𞤑𞤮 𞤥𞤭𞤻𞤭𞤪𞤢𞥄𞤩𞤫 𞤼𞤢𞤼𞤮 𞤥𞤭 𞤥𞤢𞤪𞤭” という.年齢を言うときもこの動詞を用いる(フランス語 avoir と同様か).
家族を表す語彙
ギニアでは,2019 年に施行された家族法によって最初の妻との間で了承が得られれば一夫多妻制を選択できることになっている.2020 年の調査では,特にアフリカ中央部の国々で一夫多妻制の家庭が多く見られ,ギニアでは約 26% が複婚であるとのことだった.家族関係を表す語彙としても「全兄弟」 𞤲𞤫𞥅𞤲𞤫𞤺𞤮𞥅𞤼𞤮 や「半兄弟」 𞤦𞤢𞥄𞤦𞤢𞤺𞤮𞥅𞤼𞤮 といった単語が出てきていて,一夫多妻制が文化として根付いていることが窺える.
他に気づいたこととして,「兄」は 𞤳𞤮𞤼𞤮 で「姉」は 𞤶𞤢𞥄𞤶𞤢 とそれぞれ単語があるのに対し,弟や妹についてはどちらも 𞤥𞤭𞤻𞤢𞤲 で表されることが不思議に感じた.
結び
#第 2 週では Competence 2 および Competence 3 を進め,疑問詞や人称代名詞,数詞について扱ったほか,主に人間に関係する名詞語彙について学習した.名詞クラスの話が少しずつ出てきたのは少しうれしい.