最近 The Mandela Catalogue というアナログホラーシリーズを一気見して,アナログホラーという作品の形式について自分なりに考えたのでまとめてみる.
テレビ番組
#アナログホラーといえば Local 58 が先駆的作品として有名だろう.
このシリーズの形式はテレビ番組である.とあるローカル局の番組を主な媒体としていて,放送によって我々に伝えられる真偽不明の情報や怪現象から,推測される延長線上の恐怖を感じさせる.
アナログホラーという目線で見たテレビ番組という媒体の特徴を挙げると,以下のようになるだろう:
- 過去に実際に放映された
- 投稿者の裁量次第ではこれを逆手に取って,再編集やフェイクを投稿するといった演出も考えられそう
- 不特定多数の人々が同時に同じ映像を見た可能性がある
- 電波ジャックや放送局占拠などでリアルタイムで放送に介入できる(cf. マックス・ヘッドルーム事件)
- 映像上の異変はただの現象であり,情報の真偽や一貫性についてはやや懐疑的である
ビデオテープ
#VHS などのビデオテープ形式も存在する.Gemini Home Entertainment や Eventide Media Center などはその例である.
この媒体の特徴は以下のように考えられるだろう:
- 何らかの一貫性のある題目に従って収集・映像編集されまとめられている
- 専門家など,ある特定の人物を対象として制作されており,不特定多数の人が見ることを前提としていない
- 同じ映像を何度も再生でき,複製することもできる
- 時系列に従っているとは限らない
- 大量生産されたうちの1つで,本来の映像とは異なり改変された映像の可能性がある
ビデオカメラ
#アナログホラーを爆発的に広めた The Backrooms も紹介するべきだろう.
映像形式としてはファウンド・フッテージ(found footage)と呼ばれていて,手法自体は昔からあるものである.アナログホラーとしての特徴は以下:
- 個人の体験を記録したものであり,ゆえに当事者のみが体験する(はずだった)ものである
- 他の形式と比べて編集が少なく,その場の臨場感がある
- 改変や再編集も実際のところできるが,基本的には考えにくい
- 一般の人が普段からビデオカメラを持ち歩いているとは考えにくく,何らかの意図あるいは経緯があって撮影されている
The Mandela Catalogue の形式について
#ここで改めて The Mandela Catalogue の形式について考えてみると,このシリーズには決まった形式が存在しないということがわかる.これはこのシリーズの大きな特徴であるといえる.
The Mandela Catalogue Vol.1 は,テレビ番組やビデオ資料,防犯カメラ映像などが切り貼りされて構成されており,複合的な映像となっている.一方で,Overthrone は単一の形式をとっていて,明らかに後から改変されたビデオテープである.また The Mandela Catalogue Vol.333 では資料映像ではない視点が挿入されており,作品の鑑賞者が資料映像から体験する没入感と引き換えに登場人物の物語としての流れを理解しやすくしている.これによって,単なるホラーとしての楽しさだけでなく物語としての面白さが加わっている点がこのシリーズの魅力なのかもしれない.
まとめ
#アナログホラー作品には媒体として様々な形式をとっており,それぞれ異なる特徴をもっている.ここでは代表的な形式について特に挙げたが,他にも様々な形式によって演出が考えられており,まだまだ魅力は尽きない.The Mandela Catalogue はこうした形式を複合的に取り入れた上で,物語としてまとまっている点が面白いと感じる.